WSL2へのFlutter開発環境構築
はじめに
フロントエンドの勉強を初めて約1年、
Next.jsに出会ったことで作りたいと思ったものは大体実装できるようになってきました1。
この1年はWebアプリを作ることに注力してきましたが、
最近はモバイルアプリを作りたいと思うことが多くなってきました。
一応、作りたいアプリのアイディアが現状でも3つほどあるので、
今後これを形にしていきたいと思っています。
そのため、ずっと勉強したいと思って放置していたFlutterについに向き合うことにしました。
今回は、なぜFlutterを選んだのかという個人的な背景とWSL2上のUbuntu20.04にFlutterの開発環境を構築する手順の備忘録です。
同じように悩んでいる人の参考になれば嬉しいです。
モバイルアプリ開発のイマ
モバイルアプリ開発の手法は近年多様化しています。
それは、AndroidとiOSアプリを別々で実装するネイティブ開発に加え、
FlutterやReact Nativeなどのクロスプラットフォーム開発が発達してきた影響です。
従来、モバイルアプリ開発と言えば、
AndroidはJava (数年前からはKotlinも)、
iOSはSwiftで開発されていました。
しかし、別々で開発するということは管理すべきコードが2つになるということです。
アップデートやバグ修正の手間もそれだけ増大してしまいます。
そのような中、1つのコードでAndroidとiOSアプリをどちらも開発してしまおうということで開発されたのがFlutterやReact Nativeなどのクロスプラットフォームフレームワークです。
複数環境で動作するアプリを1つのコードで実装できるということは、
前述のソースコードの管理コストに加え、
学習する言語も1つで良いという学習コストの削減にも繋がります。
例えば、FlutterだとDartという言語で開発しますし、
React Nativeの場合はJavaScriptで開発します。
しかし、AndroidやiOSアプリのネイティプ開発が時代遅れになったのかと言うとそんなことはありません。
近年では、クロスプラットフォーム開発からネイティプ開発に移行したという例も見かけるようになってきました。
なぜネイティブ開発を選択するのかというと、以下の点でクロスプラットフォーム開発よりも優れているからだと思います。
- パフォーマンスが良い
- OSのアップデートに追従しやすい
- OSレベルの新機能への対応が早い
したがって、最初に述べた通り、 モバイルアプリ開発の手法が多様化し、選択肢が増えていると考えるのが良いと思います。
なぜFlutterなのか
選択肢が増えることは良いことであるのは間違いないですが、
その分悩むことが増えるということでもあります。
混乱する頭を整理するためには、
以下の2ステップで検討するのが良いと思います。
ネイティブかクロスプラットフォームか
この点は自身の持つ技術にも影響される要素です。
しかし、個人開発の場合はほぼ間違いなくクロスプラットフォーム開発が良いのではないかと思います。
企業レベルで開発など、AndroidとSwiftそれぞれのエンジニアを確保できるのであれば良いですが、
個人開発や小規模なチーム開発で2つのソースコードをメンテナンスするのは辛いものがあると思います。
ちなみに私の技術レベルで考えると、
10年前くらいにAndroidアプリを趣味で作っていました。
Androidのバージョンで言うと、2.xの時代です。
その頃はまだAndroid Studioもなく、Eclipseで開発していた覚えがあります。
そのため、現在のAndroidネイティプ開発についてはほぼ知識を持っていないことになります。
ちなみにiOSアプリの開発は行ったことがありません (そもそもAndroidユーザーなので…)。
AndroidとiOS、2つのアプリ開発を別々に学ぶのは現実的ではないと思ったので、
私はクロスプラットフォーム開発を選択しました。
FlutterかReact Nativeか
クロスプラットフォーム開発のフレームワークとして何を選択するか?というのが2ステップ目です。
これは現状だとFlutterかReact Nativeの2択になるかと思います。
もちろん、Xamarinなど他にもフレームワークは存在しますが、
盛り上がり具合などを考えると、前述の2つから選択しておくのが良さそうです。
FlutterとReact Nativeの概要をまとめると以下の通りです。
Flutter | React Native | |
---|---|---|
開発元 | ||
言語 | Dart | JavaScript |
初版リリース | 2018年 | 2015年 |
ここで注目すべきは、Flutterの開発元はAndroidの開発元であるGoogleであるということです。
GoogleはFlutterの開発にかなり力を入れているため、
少なくともAndroid開発に関してはネイティプ開発との差が縮まっていくのではないかと考えられます。
また、急にプロジェクトが終了することがなさそうなことも重要です。
一方、ReactNativeはJavaScriptで開発できることが魅力です。
私は実際に触ってはいないのですが、
書き方を見た感じだとReactのコードに非常に近いと感じました。
私もNext.js使いなので、はじめはReact Nativeを選択しようと思いました。
しかし、色々考えた結果、以下の理由からFlutterを選択しました。
- 現時点でFlutterの方が優勢の模様
- 開発元Googleへの期待
- Dartの学習コストがそこまで高くなさそう
- React Nativeなら最悪乗り換えることになってもそこまでハードルが高くなさそう
新しい言語を勉強するの楽しい2
正直、どちらを選んでも良いと思います。
そんなことより早く勉強をはじめることの方が価値が高そうです (散々悩んだ自分への戒め)。
なぜWSL2上に環境構築するのか?
私は普段、自宅ではWindows端末を使っています。
一方、職場ではUbuntuをメインで使っています。
なるべく自宅と職場の環境を揃えたいため、
自宅のPCではWSL2上のUbuntu20.04でプログラミングしています。
Windows上で直接開発しようとすると、
環境構築でコケる事が多いのでなるべくWSL2上でやった方が楽なことが多いです。
ということでFlutterでのモバイルアプリ開発環境もWSL2上に構築することにしました。
以下、その作業の備忘録として残しておきます。
WSL2へのFlutter環境構築手順
Flutterの環境構築手順をステップを分けて、順番に説明いたします。
今回は、VSCodeでコーディングを行い、
Androidの実機でワイヤレスデバッグできる状態までを目指します。
なお、WSL2のインストールやUbuntuの導入などについては割愛します。
また、私はシェルとしてzshを使っています。
それ以外のシェルを使っている場合は適宜読み替えて下さい。
JavaSDKのインストール
AndroidSDKのインストール
sdkmanager
コマンドを実行し、以下の出力が表示されればOKです。
次に、adb(Android Debug Bridge)
を使うため、platform-tools
をインストールします。
adb
コマンドでhelpが表示されればOKです。
次に、AndroidSDKをインストールします。
2021年10月現在はAndroid11 (APIレベル31)が最新バージョンなので、
それをインストールします。
なお、インストールできるイメージは以下のコマンドで確認できます。
インストールするイメージを選択して、インストールします。
その後、インストールしたイメージのライセンスに同意する必要があります。
以下のコマンドを実行し、全て同意していきます。
Flutterのインストール
公式ページで最新バージョンを確認し、インストールします。
2021年10月現在は2.5.2が最新バージョンなので、それをインストールします。
以下のように、Flutterのバージョンか出力されればOKです。
flutter doctor
コマンドを実行し、問題なく環境構築ができていることを確認して下さい。
私は以下のような出力結果となりました。
VSCodeの拡張機能のインストール
WSL2環境でVSCodeを起動し、拡張機能をインストールします。
以下のコードでVSCodeを起動します。
なお、VSCodeのインストール手順については割愛します。
以下の拡張機能をインストールします。
Flutter拡張機能をインストールすると、以下のDart拡張機能もインストールされるかと思います。
確認しておいて下さい。
ここまでで環境構築は完了です。
プロジェクトの作成と実機でのワイヤレスデバッグ
プロジェクトの作成
以下のコマンドでFlutterプロジェクトを作成できます。
(test_app
はプロジェクト名です。自由な名前を設定してOKです。)
Android端末でのワイヤレスデバッグ
ワイヤレスデバッグを有効にするため、
Android端末の設定を変更します。
なお、私はGoogle Pixel5 (Android 11)を使っています。
端末によって設定画面が若干異なる場合があります。
開発者向けオプションの有効化
はじめに、開発者向けオプションを有効化します。
「設定」→「デバイス設定」→「ビルド番号」を7回タップして下さい。
有効化されると、「設定」→「システム」内に「開発者向けオプション」という項目が増えます。
ワイヤレスデバッグの有効化
「設定」→「システム」→「開発者向けオプション」の「ワイヤレスデバッグ」をONにします。
以下のような確認画面が表示されるので、「許可」をクリックします。
その後、「ワイヤレスデバッグ」→「ペア設定コードによるデバイスのペア設定」をタップします。
以下のようにペア設定コードおよびIPアドレスとポートが表示されます。
この情報を使ってペアリングを行います。
端末とペアリング
先ほどのIPアドレスとポートを使ってペアリングを行います。
このペアリングの設定は1度行えば、2回目以降は不要です。
端末と接続
では端末と接続します。
このときはペアリングのときに使用したポートとは異なり、
「開発者向けオプション」→「ワイヤレスデバッグ」の「IPアドレスとポート」に表示されているポート番号を使用します。
では、接続してみましょう。
接続している端末は以下のコマンドで確認できます。
以下の例では、Chromeも表示されていますが、Android端末が接続されていればOKです。
実機での実行
プロジェクトのディレクトリに移動し、 VSCodeで開きます。
lib/main.dart
を開き、F5
キーを押してデバッグを開始します。
ビルドに少し時間がかかりますが、無事ビルドが完了すると以下のようにサンプルアプリが起動します。
無事起動できていれば、今回の環境構築は完了です!
まとめ
これでWSL2上でFlutterによるモバイルアプリ開発環境が整いました。
これからはFlutterを勉強して、作成したいアプリを開発できるように力をつけたいと思います。